2017年 10月21日

「下町庶民の夢が織りなす看板建築 かづさや」日本橋49号(1983)

 鎧橋から小網町へ少し歩くと、大通りに面して間口三軒ほどの古風なお店がある。二階の屁の上「かづさや」の看板を掲げた、この店は、前面をすべて銅板で覆っている。緑青がふいているので、近づいて目を凝らさないとわからないが、小さな型版の銅板を組み合わせた模様は見事なものである。サイの目、分銅、青海波……模様はいずれも江戸小紋で統一されている。できあがった頃は、銅板が赤銅色に光り輝き、この建物が輝いて見えたという。

日本橋 49号 (1983年5月1日 日本橋コミュニティセンター発行)の 藤谷陽悦 氏 執筆「下町庶民の夢が織りなす看板建築」附載の「看板建築」(撮影・新井英範 氏)より転載。